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天体写真 (月)

月

月食の撮影方法

月の満ち欠け、月食などの画像、撮影方法を紹介しています。(全1ページ)

<カメラ1> ニコン D5000
<カメラ2> ニコン Nikon1v3
<望遠鏡> タカハシ FS60CB / ビクセンR200SS
<画像処理> Adobe Photoshop CS4

開設: 2018/10/27

最終更新:

1.皆既月食を撮るときの設定

天気などの要素も含めると、2〜3年に1度ほどの確率で見ることのできる皆既月食。地球の影に月が完全に入り込み、赤くて暗い幻想的な満月へと変化を遂げます。 皆既月食中の月面は均一の明るさではなく、地球の影の中心方向に近づくほど暗く、グラデーションがかかったようになります。そんな皆既月食を撮るときの露出とISO感度はどのくらいがよいのでしょう。

【2021年11月19日 部分月食】 最大食分の頃

部分月食の露出値

2021年11月19日18時14分頃 / 撮影地 : 熊本県自宅ベランダ / カメラ : ニコン Nikon1 v3 / 直焦点撮影 / 望遠鏡: タカハシ FS-60CB(D=60mm fl=355mm F5.9)+フラットナー / ビクセン SXD にて追尾 ※PhotoShop CS4

【2014年10月8日 皆既月食】 皆既になる前

2秒露出, ISO 200

皆既月食

2014年10月8日19時10分 / 撮影地 : 熊本県自宅ベランダ / カメラ : ニコンD5000 / ビクセン R200SS +コマコレクター (D=200mm fl=800mm F4) / 直焦点撮影 / ビクセンSXDにてノータッチガイド / ISO : 200(最低値) / 露出時間 : 2 秒露出×2 コマ ※PhotoShop CS4 (トリミング)

【2007年8月28日 皆既月食】 皆既中の満月

1秒露出, ISO 1600

皆既月食

2007年8月28日 20時16分〜17分 / 撮影地 : 熊本県自宅ベランダ / カメラ : ニコンD70 / ビクセン R200SS (D=200mm fl=800mm F4) / 直焦点撮影 / ISO : 1600 / 露出時間 : 1/1.3秒×9 コマ ※ステライメージ5 (トーンカーブ、シャープ処理等)

2007年夏の皆既月食は、11年ぶりの撮影成功、デジタルでの撮影は初となりました。熊本では雲が多いながらも晴天に恵まれました。 口径20cm反射望遠鏡に一眼レフデジカメを取り付けて撮影した、皆既月食中の月の写真です。

皆既月食の撮影方法

皆既月食は普通の満月と違って地球の影に覆われて暗くなっているので、きれいに写すには少々テクニックが必要です。デジカメだけでも撮影できますが、月が大変小さくしか写らず「証拠」ぐらいにしかなりません。そこで、カメラに望遠鏡や望遠レンズを取り付けたり、その他撮影テクニックの工夫が必要になってきます。

まず、ブレへの対策をします。そして、月を拡大するために望遠レンズまたは天体望遠鏡と接続します。

ブレは、手持ちで撮ると起こります。そのため三脚などにしっかり固定しなければなりません。ですが、皆既月食の場合はそこからさらに別のブレ対策をします。なぜなら、月面が暗い上に日周運動で動いていくので、三脚に固定していてもブレが発生するためです。そこで、「赤道儀」という、地球の自転に合わせて星を追いかける機械を使います。

赤道儀

皆既月食の撮影方法 - 赤道儀を使わない場合

ところで、今時のデジタルカメラは非常にISO感度を高くすることができますので、その分露出時間を短くすることができます。その場合、赤道儀なしでも撮れることが考えられます。皆既月食を高感度ISOで「パシャッ」と1秒くらいの短い露出で何枚も撮り、それらをコンポジット合成するという技で皆既月食を鮮明に写す技です。望遠レンズで手軽にできそうですが、それはあくまで応用編ということにしておきましょう。

皆既月食を直焦点撮影で撮るための準備

「ブレずに皆既月食を画面いっぱいに大きく撮りたい」。そんな場合、望遠鏡につないで撮ります。望遠鏡の接眼部にカメラを接続して撮影する方法を「直焦点撮影」といいます。

手順はまず望遠鏡に赤道儀が備わっていれば、赤道儀のセッティングをします(皆既月食撮影での極軸合わせは大雑把でOK)。

追尾を開始したら、カメラを天体望遠鏡の接眼部に接続します。そして月を導入したら、カメラの設定をM(マニュアル)に設定して、望遠鏡のピント合わせの微動ハンドルを回転しながら、月面の模様や月の輪郭が一番はっきり見えるところで固定します。これでピント合わせが完了です。

望遠鏡の接眼部

ところで、月面には東西南北があります。月面の「北」を上に向けて撮影するのがスタンダードのようです。望遠鏡につないだカメラは回転させて月面の北が上になるようにすると、天地があった月面ということになります。ちなみに面倒であれば後で画像処理で回転することもできます(ちなみに私はずっとこの荒業をしています)。

さて、カメラの回転角・ピント合わせが終わったら、もう一度満月が視野の中心にきているか微調整します。ズレていれば赤道儀のコントローラーなどから望遠鏡を動かして合わせます。

ISOとシャッタースピードを決める

次に、ISO感度の決定とシャッタースピードを試行錯誤していきます。絞りは「直焦点撮影」なので存在しません。強いて言えば、望遠鏡がレンズにあたるので、そのF値は天体望遠鏡の焦点距離を口径で割った値になります。

ISOの設定値ですが、基本低いのが理想です。なぜならISOは低ければ低いほど低ノイズで、高ければ高いほど画質が低下するからです。しかし低すぎるとシャッタースピードを長くする必要があり、ブレのリスクも大きくなります。そのことから、高すぎず低すぎず、ほどほどのISOを選ぶのが良いようです。

赤道儀を使用しない場合や、S/N比向上を狙う多数枚コンポジット合成前提であればISO感度は高く設定して短い露出で連写していきます。

シャッタースピードの適正値は、設定したISO感度によって変わってきます。皆既月食中の月面ならば、ISOをやや高く設定して、2秒や4秒で撮ることが多いです。でも本番では、テスト撮影をしながらちょうど良い月面の露出になるようシャッタースピードを変えながら何枚も撮影してみるとよいでしょう。すると、上の2枚の皆既月食の写真のように、ちょうど良い設定を見つけることができるはずです。

2.欠けていく月食の経過を撮る

欠けていく月食の経過を撮る

皆既月食までにはなりませんが、月の一部分が地球の影に隠されるにとどまる「部分月食」ならば、1年間で2回ほどの確率で見ることができます。この場合、赤銅色を出すことは難しいので、地球の影に食されて独特の形をした「欠けた満月」を収めるのが定番です。地球の影による「欠け際」はぼんやりしていて、地球の影の大きさが月の4倍ほどであることがわかります。撮影も比較的簡単で、露出は普段の満月を撮るときと同じか、若干長めにする程度で済み、ブレてしまう可能性も低いです。

【2018年7月28日 月没帯月食】 部分月食の経過

1/40秒,1/15秒,1/6秒,1/2秒露出

部分月食

2018年07月28日03時20分〜 / 撮影地 : 熊本県自宅ベランダ / カメラ : ニコン Nikon1V3 / 望遠鏡 : ビクセン R200SS (口径200mm 焦点距離800mm, F4)+コマコレクター / 露出時間 : 順番に 1/40秒露出×3、1/15秒露出×2、1/6秒露出×2、1/2秒露出×2 ※PhotoShop CS4 (トーンカーブ、色合い、アンシャープマスク等)

比較明合成して地球の大きな丸い影を描出する

難易度が高いテクニックですが、この写真のように、部分月食の経過を一定時間ごとに撮影し、あとでパソコンで「比較明合成」をして、地球の大きな丸い影を描き出すことも可能です。

【2021年11月19日 部分月食】 部分月食の経過

部分月食の経過

2021年11月19日18時18分 / 撮影地 : 熊本県自宅ベランダ / カメラ : ニコン Nikon1 v3 / 直焦点撮影 / 望遠鏡: タカハシ FS-60CB(D=60mm fl=355mm F5.9)+フラットナー / ビクセン SXD にて追尾

※PhotoShopCS4にて6コマコンポジット合成,画像処理,トリミング

望遠鏡における月食中のピント合わせ

部分月食中の満月は地球の影によって一部欠けている状態なため、欠け際にはクレーターは表れずぼんやりしています。そのためピントが合わせにくくなります。

なので、欠けている側ではなく月の輪郭、すなわち月の地平線を利用してピントを出しましょう。表面模様でも合わせられますが淡いため、月の輪郭を見ながら合わせると黒と白がはっきり分かれるところで固定すればよいので、やりやすくお勧めです。

皆既月食中のピント合わせではもう眩しい部分は残っていないので、暗くなった月の輪郭または表面模様を使ってピント合わせをします。こちらも同様に、月の輪郭を使うのがお勧めです。
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