特集

 デジカメ天体撮影

デジタル・カメラで星を撮ってみよう!

ここ数年、デジタルカメラは大きく進歩しました。
以前は露出時間の制限があり、星を写せないデジカメが大多数を占めていましたが、
現在ではほとんどの機種が可能です。

「長時間露出」のできるデジカメならば、簡単に星を写す事ができます。
ここでは、デジカメで星を撮る方法を案内します。

Since 2002. 1.20  /  Last Update:

星の撮り方にもいろいろあります。大まかに分けると、望遠鏡につないで遠くの天体を拡大して撮るのと、肉眼で見上げたそのままの様子を撮るのとがあり、それぞれやり方が変わってきます。

1.固定撮影

必要な機材

カメラを三脚に固定し、10秒〜数分間の露出で撮る方法です。
肉眼で見上げた星空の様子を(拡大せずに)そのまま写す感じで、写る範囲は広く、「星座(星の並びのまとまり)」の写真や天の川の写真を撮ることができます。

2.直焦点撮影

必要な機材

望遠鏡・赤道儀・モータードライブはセットになって販売されている場合もあります。

カメラを望遠鏡の焦点(覗き込むところ)に接続し、目の代わりとなるデジカメ(CCD面)に直接、焦点を結ぶ方法です。
望遠鏡の光学系をそのまま「望遠レンズ」のように使うので、一眼レフカメラ用の望遠レンズよりも効率よく拡大することができます。
この方法ですと、月・惑星のクローズアップはもちろん、迫力のある星雲・星団・銀河を撮影することもできます。但し、地球の自転により動いていくので、赤道儀という機材が必要です。

固定撮影について

基本: オートモードでは星は写らない。

デジカメで星空に向けて「パシャッ」と撮っても、完全な真っ黒い画像になってしまいます。これは、あまりに星の光が弱すぎて、CCDが光をとらえる事ができないためです。

そこで、カメラの設定を変えてシャッタースピードを長くすることが必要になってきます。

モードをMマニュアルに設定しよう!

● 星を撮るためにシャッタースピード(露出)を長く設定する

 普段私達が風景や人物を撮る場合、シャッタースピードは1/1000秒から、遅くても1/10秒です。これはほとんど一瞬のうちの露出ですので、カメラを手に持って「パシャッ!」で写せるのです。

 これに対し、星を写すにはシャッタースピード(露出時間)を10秒〜数分に設定する必要があります。ここまで露光が長くなるわけですから、手持ちでは写せず、カメラを三脚に固定しなければなりません。また、マニュアルモードに切り替えて、長時間シャッターを開けたままにできる「バルブ(Blub)モード」に設定します。
 そう、星を撮るにはお手持ちのデジカメに「バルブ」撮影機能が備わっているかどうかが肝心なのです。

● バルブ撮影とは

阿蘇山。露出60秒
撮影日時:2002.10.22 01:08 撮影地:熊本県南阿蘇村

バルブ撮影とは、シャッターボタンを指で押し込んでいる間、ずっとカメラのシャッターが開いたままで露光を続ける長時間露光のことです。

 左の写真は、60秒のバルブで撮影した深夜1時の阿蘇山です。この日は満月で、月明かりに照らされた景色を60秒間露出することにより、昼間と見分けが付かない写真になりました。でも、よく見るとネオンライトや星が写っているのが判り、夜である証拠もしっかり写っています。

 とはいえ、長い時間、指でシャッターボタンを押し続けるのは辛いし、知らない間にブレてしまう可能性があります。ぜひ別売りのレリーズを用いるとよいでしょう。

 また、バルブ撮影機能の備わっているデジカメの多くは、バルブ撮影はできるがこれ以上長く露光できない、という露出時間の上限値があります。星を撮るのに最適なデジカメ、ニコンCoolpix995の上限値は60秒となっています。

● 星を写せるデジカメとは

■マニュアル設定が可能で、シャッタースピード最長値が長い機種 (理想はバルブ撮影)

 安価な小型デジカメは大抵、「お手軽撮影」を基本として設計されているため、フルオート仕様になっています。つまり、シャッタースピード等の設定を変更できず、星を撮るのが難しい機種がほとんどです。メーカーが独自に設定している「夜景撮影モード」などのスローシャッター撮影機能があったとしても、あくまでもそれは夜景向けであり、星を撮るのには露出が不十分です。

 対して、撮影機能の豊富な中級デジカメなら、ある程度まで設定をカスタマイズできる機種がほとんどなので、本格的とはいかなくとも天体撮影が可能です。さらに、一眼レフのデジカメともなれば、バルブの上限値もなく完全なカスタマイズが可能で、数十分間露光の天体撮影もできます。なので、本格的に天体撮影をしたいのであれば(多少高価ですが)一眼レフデジカメの購入をお勧めいたします。

 星を写せるデジカメを選ぶ場合は、公表されているスペック表をよく見て、露出(シャッタースピード)を何秒まで長く設定できるかをしっかり見極めて選びましょう。バルブ撮影ができるのなら最高ですが、最長露出が長ければ長いほどいいです。最長露出8秒程度あれば、天体撮影にはギリギリ合格といった感じです(4秒ではちょっと厳しい)。

案内

デジカメで星を撮るには

  1. カメラを三脚に固定し、空の被写体に向ける。
  2. (液晶ディスプレイには何も写らないので、レンズの向いている方向を確認しながら調整)

  3. マニュアルモードに設定し、シャッタースピード(SS)をバルブ(Blub) [または最長値] に設定する
  4. ISO(感度)が設定できる機種の場合、ISOは高く設定するのがお勧め。

  5. ピントを無限遠(∞) に固定する (機種によっては風景撮影モードに設定する)
  6. 絞り(F値)を最小値または1〜2段絞りに設定する。(例:F2.8)
  7. 10秒〜数分間の間、シャッターボタンを押し込んだままにして露光する
  8. (星の軌跡が流れる関係上、15秒〜30秒が最適。)

ブレを防ぐために、カメラは面倒でも三脚に固定しよう!

● カメラにバルブ撮影モードが付いていないときは

 「マニュアル撮影モード」などにして、シャッタースピードを一番長く設定しましょう。
機種によって最長シャッタースピードは異なりますが、4秒にまで長くできれば、1等星や惑星などは簡単に写ります。


天体撮影のコツ

● ブレに注意しよう

ブレによる失敗例 露出32秒

 左の画像は、32秒露出で撮ったオリオン座ですが、ブレてしまった失敗例です。星の像が3個ほど繋がったような形になってしまっています。バルブ撮影で星を撮る場合、何十秒間も指でシャッターボタンを押したままにして露光すると、気付かないうちにブレが発生することがあります。これは、シャッターボタンを押し込んでいる指が微弱に動いていて、カメラにも振動が伝わるためです。そのために、露出開始時と露出終了後の星の位置が変化して、星がぐにゃぐにゃと曲がったり、幾重にもダブったように写ってしまうのです。
 指で直接ボタンを押し込んで露出するバルブ撮影は、失敗する確率も高くなります。そのため、カメラ本体に触れずに露出できる専用のレリーズ(赤外線リモコン)を使えばブレることはないので、ぜひ利用したいところです。

● 「星座」ごとに撮ってみよう

 星を撮るとはいっても、無造作に空を撮っていては、光の点々が画面全体に写っているだけのつまらない画像になってしまいます。

 それはそれで美しいかもしれませんが、無秩序に散らばる星々を親しみやすく覚えるために古代の人々が決めたのが「星座」というまとまりです。ですので、星を撮るときは星座ごとに撮ってみましょう。そうすれば、オリオン座の写真、さそり座の写真、北斗七星の写真、という具合に、作品として成り立つ星座写真が得られます。まずは、本やネットなどで星座(星の並び)を覚えておき、実際の夜空でその星座を見つけて、撮っていきましょう。空に広がるのは広大な宇宙空間なのですが、その無数の星々を星座として眺めれば、うんと親しみやすくなります。

● 市街地ではカブりやすい。

 大都市などの市街地では、ご存知の通り夜空が明るく、星があまり見えません。そんな市街地の明るい星空を撮る場合、ものの30秒も露出すればカブりの影響で真っ白な画像になることもあります。そんな場合、ISO感度を低く設定したり、露出時間を10秒前後に切り上げると良いはずです。実際に撮影してみて、カブらない最適な露出時間等の設定を見つけましょう。

● 電線が入らないようにしよう。

 画面の中に電線が写り込むと、せっかくの星空が黒い線で寸断されたようになります。夜なので暗くて、気付かずに電線が写り込んでしまいやすいので、住宅地での撮影の際は注意しましょう。

● 長時間露光に伴ってノイズも増える

 デジカメでのバルブ撮影では、ノイズが発生するのが一番の難点です。ISO感度を高く設定すれば、その分、ノイズの割合も大きくザラついた感じになります。

 また、バルブ撮影では「暗電流ノイズ」という、ピンク色や緑色といったカラフルな点状ノイズも発生することがあります。カメラによっては、この暗電流ノイズを減算法によって除去することができます。もしノイズ除去機能が付いていなくても、手動でダーク補正を行えば、暗電流ノイズをある程度キャンセルすることができます。これは、レンズのキャップを閉めた状態で、同じ露出をかけて真っ暗な画像な画像を撮ることでノイズ情報を取り、パソコン上で減算するやり方です。PhotoShopを使用して元画像とノイズ画像とをレイヤーに分けて重ねることでノイズをキャンセルした画像にすることができます。

● ホワイトバランス設定は大きい

 星空を写した画像では、「背景色」が重要なポイントとなります。ご存知の通り、星々の背景は宇宙の色、つまり真っ黒でなければなりません。しかし、国内の空は市街光の影響で明るく、真っ黒には写らないことが多いのです。その場合、背景色は赤っぽくなったり、緑色がかったり様々な色で写ります。

 この背景色は、ホワイトバランス設定で変えることができます。背景はなるべく色を持たせず、グレーに写すのが理想ですが、実際には不可能です。ホワイトバランス設定で、自然な夜空の色と感じる自分好みの夜空の色にしましょう。ホワイトバランスの設定名称はメーカーによって違いますが、「電球」設定では青く、「太陽光」では赤っぽく写ります。

 このホワイトバランス(背景色)の問題に関しては、パソコンに画像を取り込んだ後、画像処理ソフトで色合いを変えることができます。その前提の場合は撮る時にはそれほどこだわらなくて済みますが、極端に色がおかしくなるホワイトバランスだけはカメラの設定で避けておいたほうが無難です。

ここでは、私が撮像したデジカメによる天体写真をご紹介しましょう。

(「バルブ撮影」により、最長で60秒露出が可能なニコン・Coolpix995で撮影した画像もあり。)

[初級偏]。 簡単に撮れる月

 

 月は、明るいのでほぼどんなデジカメでも写ります。ただ、見かけが小さいので、ズーム機能が備わったデジカメでないと、大きく写らず月面模様も判りません。一般的なデジカメではズームを最大にしてもまだまだ小さいですが、できる限り月が大きくなるようにしましょう。

■月をダイレクトに撮る場合、ピントは「無限遠」に設定

 デジカメで直接月を撮る場合、オートモードのままだと、被写体が被写体なだけにピントが合いにくいものです。そこで、「風景撮影モード」などにすると、ピントは無限遠に固定されるのでうまく撮れる場合があります。
 また、手持ちで撮るとブレやすいので、三脚に固定すれば万全です。

 それでも、オートモードだと月が眩しくて露出オーバー(白とび)になって写りがちなので、マニュアルモードに設定して露出時間を短くしてやれば、問題ありません。

 この三日月の画像では、月の夜側(光っていない部分)もうっすら写り、三日月でも月がまん丸である事が判って豪華でしょう? でもこれだと月の昼の表面は白飛び状態で真っ白で違和感を覚えます。そこで、露出を短くして撮ってみると、このように見た目に近い感じで写ります。↓

 

見た目に近い月にするか、より明るい月にするかの違いですね。

[中級偏] 微弱な光を蓄積させる、長時間露光。

カシオペア座

Nikon Coolpix995 露出60秒、最小ズーム。画像処理。撮影日時:2002.10.15 02:03 撮影地:熊本県南阿蘇村

よく知られる星座、「カシオペア座」です。W字形に星が並ぶ星座として有名ですね。
判りやすいように星座線を付けてあります。天の川も写っています。

この画像の露出時間は60秒です。
「マニュアル撮影」モードで、S(シャッタースピード)設定を「バルブ(BLUB)」に設定し、60秒間、シャッターボタンを押し続けて撮ったわけです。

60秒もの間、露光する(光を蓄える)わけですから、肉眼では見えない星々がびっしり写ります。撮影後にディスプレイで確認してみた時に、あまりの星の数にきっと驚くことでしょう。
なにせ、肉眼では(星座線で繋いである)W字形しか見えないぐらいですから。この画像では、暗い星がたくさん写りすぎて、カシオペアのW字形が目立たなくなってしまったほどです。

はくちょう座

Nikon Coolpix995 露出60秒、画像処理。 撮影日時:2002.10. 1 21:33 撮影地:熊本県南阿蘇村

優雅に天の川を泳ぐ白鳥の姿…。夏の星座の代表格、はくちょう座を狙ってみました。
1等星・デネブを頂点とする「北十字」としても有名です。
星座線も付けてみました。

簡単な撮影でも、天の川がうっすらと写りました。はくちょう座に沿って縦方向にぼんやり写っています。

[上級偏]。 デジカメで望遠鏡を覗かせて撮る! (月/惑星)

月面と土星

Nikon Coolpix995 露出1/15秒、 撮影日時:2002. 3.20 20:05 撮影地:熊本県熊本市

 ドカーンと月面クレーター&土星のわっか! これまた、デジカメで撮ったんです。
とはいえ、カメラを望遠鏡の接眼レンズに押し付けて「パシャッ」で撮れたものです。

 これは、2002年3月20日に見られた、珍しい月と土星の接近です。月に対して土星がすごく小さく見えますよね。これは、月までの距離の400倍も遠くに土星があるせいです。すなわち、見かけ上の月・土星の接近なんですね。そして、実際の土星の大きさはというと、月の35倍もあるのです。まさに月とスッポンです(ここでは月が”スッポン”ですね)。

上弦の月

Nikon Coolpix995 露出1/30秒、 撮影日時:2003. 7. 7 20:45 撮影地:熊本県熊本市

木星

675枚コンポジット 画像処理。撮影日時:2007. 7.23 撮影地:熊本県熊本市

土星

Nikon Coolpix995 露出1/15秒、 3枚コンポジット 画像処理。撮影日時:2003.10.24 01:29-31 撮影地:熊本県熊本市

デジカメと望遠鏡をくっつけて撮る

 月面や惑星は、明るい被写体なので、デジカメと望遠鏡を接続して拡大して撮ることができます。
 デジカメを望遠鏡を覗かせるようにして撮る撮影法を「コリメート撮影」といいますが、この撮影法でまともに惑星を撮るには、デジカメを望遠鏡を接続するためのアダプターが必要となります。写真のように、手持ちのまま望遠鏡を覗かせて撮ることも不可能ではありませんが、よほどカメラをしっかり構えておかないと、ブレてしまいます。

 また、コンポジット合成という同じ画像を何枚も連続して撮り、パソコン上で重ね合わせて平均化するという専門的な画像処理を施すことにより、デジタルなノイズを軽減したり、惑星表面模様のディテールを豊かにするなどの画質向上が図れます。上の木星の画像では、675枚の連写画像をコンポジット合成することにより、縞模様がくっきりと浮かび上がりました。

[番外偏]。 スローシャッターなら、夜景も綺麗に写る!

横浜の夜景

露出1秒、 撮影日時:2002.11.21 22:18撮影地:神奈川県横浜市

 デジカメの露出時間を1秒以上にまで長く設定できるデジカメなら、星空だけでなく、夜景もはっきり写すことができます。

 この画像は、1秒露出で撮った横浜ランドマークタワーです。
星空を撮るためには、最低でも8秒以上露出できる機種であることが最低条件ですが、夜景を撮るのならば1秒まで露出できればOK。デジカメの機種によっては「夜景撮影モード」というのがあるものもあります。

 ただし、夜景を撮る場合も手持ち撮影ではブレますので、必ず三脚を使いましょう。三脚がない場合、デジカメを地面に押し付けて固定させて撮る、という荒業もあります。まさにこの画像がそうです。

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